スタンガン・スプレーの無差別販売の実情について

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まず、前提として、護身用品を取り扱う私どもの業界の実情について、ご説明いたします。

私どもが取り扱っている護身用品には様々な物がありますが、中でも、特にスタンガン、催涙スプレーなどは、相手を物理的に制圧する「非殺傷武器」であり、重篤な怪我や後遺症を残さないだけで、正しく使用すれば犯罪からの危険から身を守る道具になりますが誤った使用をすれば「人を襲う武器」にも成り得るものです。実際、スタンガン、スプレーなどは、遺憾ながら多くの犯罪で使用されてしまっている事実があります。


■下記の検挙件数は警察庁刑事局捜査支援分析管理官付統計係から情報開示して頂きました。
■例えば、公開されているもので、検挙数は、以下のとおりです。
■平成26年以降から、スタンガン、スプレー共に倍増しています。

  スタンガン スプレー
平成28年(2016年) 118件 841件
平成29年(2017年) 139件 945件
平成30年(2018年) 104件 981件

このような実態に鑑み、「二面性を持った製品」は犯罪で使用されないよう、「社会不安」の抑止のためにも、社会的に規制されていくべきと当協会は考えておりますが、銃刀法のように、これらを包括的に取り締まる法律は存在せず、その一部の所持に関し、軽犯罪法違反の可能性がある程度にとどまっています。

そこで、このような状況の下、販売者責任において自主規制した販売を実施する社会的な使命感と確固たる倫理観が不可欠と当協会は考えております。

その一つは、販売店による、販売規制であり、未成年者者への販売禁止はもちろんのこと、犯罪に使用しないなどの同意や、「運転免許証」をはじめとした身分証明書の提示による本人確認義務など身元確認を必ず実施する必要があります。このような考えから、当協会は、業界有志とともに、自主規制団体を組織し、1996年8月に警察庁生活安全企画課から「日本護身用品協会」の名称使用の承諾を得てから、すべての協会加盟店で完全な自主規制販売を実施しています。当協会加盟店から販売された商品に関しては、本人確認がなされることにより、所持者に犯罪利用を躊躇させる効果があり、悪意の購入者を排除できます。実際、当協会加盟店から購入した護身用品を用いた犯罪は、当協会が確認する限り全体の約1.2%、特に平成28年以降は約0.7%程度にとどまります。この実績は取りも直さず、販売自主規制が有効に機能していることを実証しています。

また、当協会加盟店が販売した護身用品は、それぞれの購入者を辿れる仕組みを導入しており、仮に、犯罪利用など不当な目的で利用された場合には、当協会に問い合わせることにより、購入者をすぐに特定することができるようにしています。実際、そもそも犯罪利用されることが少ないものの、犯罪利用された場合には、警察からの照会に応じ、購入者情報を警察へ届けるなどの方法をこれまでとってきました。

もっとも、護身用品を取り扱う業者の中には、軽犯罪法以外に護身用品を取り締まる法律が無いことを理由に、違法な販売ではないため、自主規制など不要と頑なに主張して、無差別販売を続けている業者があります。そのような業者にも、自主規制を行うべきことを日本護身用品協会から説得を試みたことはありますが、一切受け付けないのが現状です。このような業者が野放しとなっている状況が続けば、自主規制を行っている協会加盟店も含め、無法の業界との印象を世間に与えることともなり、業界の信頼は地に落ちるものと考え、当協会は、これらの業者の営業方法を懸念しております。

延期されたものの、来年にはオリンピックの開催もあり、開催に際して、犯罪利用を含め、様々な違法な手段に護身用品が使用されることが懸念されます。当協会としては、早期に対応する必要を確信しており、使命感を以て進言いたします。